オフィスの業務における共有フォルダの困りごとについてまとめてみました。
何処に何のファイルが有るのかわからない
共有フォルダの役割はファイルの保管や共有です。ところが直観的にファイルの所在が分からなかったり探すのに手間がかかったりしてしまう場合には、本来の役割が効率的に果たせません。
先ず共有フォルダに求めることは、使用者が必要なファイルを容易に探せる仕組です。
退職者のファイルを消せない
毎年、新入社員が入社するのと同時に退職される方もいらっしゃいます。その方の使用されていた共有フォルダは容量節減のために削除するのが好ましいのですが、実際には「もしも削除したフォルダに重要なファイルが入っていては困る」との懸念から、システム担当者はなかなか削除に踏み切れないという事が多々あります。
退職された方の共有フォルダが分かり易く整理されていれば、丹念にファイルを調べて精査することも可能ですが、多くの場合では調査に多大な時間が必要となることから現実的ではないようです。この退職者のファイルを精査できないことが、削除すべきファイルを判断をできない理由でもあります。
共有フォルダは肥大化する
退職や異動した人のファイルを削除できなければ、共有フォルダは年月の経過と共に肥大化します。システム担当者にしても自分の作成したファイルなら判断できるのですが、それ以外のファイルは業務を担当している人でなければ重要度が分からないので判断できないのです。
ある市役所では共有フォルダの容量が大きくなり過ぎてファイルサーバーの容量が不足したそうです。そのために利用者の容量を制限したとのことです。
これでは毎年利用できる容量が減り続けることになります。
ファイルを探すのが更に難しくなる
もともと共有フォルダはファイルの所在を把握するのが難しいのですが、数が増えると更に探すのが難しくなります。
肥大化した共有フォルダでは、全体像を把握している人は一人もいない筈ですので、共有フォルダ本来の目的を果たせなくなっています。
整理方法のルールを知らないと使えない
共有フォルダを見ただけで、「どこに何のファイルが格納されている」と認識することは困難です。そのため、多くの組織ではファイルの保存や運用に関するルールを定めています。
ルールに基づいた運用は「全員がルールを厳守」しなければならない難しさがあり、ルールを知らなければ使えないという欠点もあります。
また、ファイル作成者がファイルを共有フォルダに入れなかったり、共有フォルダのルールを守らなかったりすると、ルールを知っていても使えない場合があります。
部署毎にルールが違う
部署毎に共有フォルダの運用ルールが異なる場合があります。組織に異動はつきものですが、新たに配属した人はルールを知らない新入社員と同じですので、ルールを覚えるまでは戦力として十分ではありません。
このことは働く人にとって負担でもあり業務効率を損ねることになるので、運用ルールは全部署で統一することが好ましくなります。
本来ならルールに頼らずに、見ただけで「どこに何のファイルがある」のかが分かれる仕組みが求められるのです。
検索で目的のファイルを探すのは難しい
「ファイルを探すには、検索すれば良い」との考えがあります。しかし、探したいファイルの命名規則が周知され、使用者がそれを順守して初めて検索が有効になります。
また、新たに作成したファイルを命名規則に合わせようとしても、判断が付かないことが多くあります。その都度命名をどうするかといった打ち合わせを開催したり、決まった名前を周知したりすることは現実的ではありません。このような理由から検索は難しいのです。
自分の作成したファイルも検索では探せないことがありますが、他の人のファイルを探すのは更に難しくなります。見つからない際に「検索に引っかからない」のか、「存在しない」のかさえも判断できないのです。
使用者は共有フォルダに関心がない
ルールを決めても、全員が守ってくれるとは限りません。システム担当者が苦労する点ですが、これは担当者のマネジメントの問題ではなく、私たちがパソコンという装置を用いていることに起因します。
例えば、乱雑な書庫を上司が「整理してくれ」と言えば、部署内の几帳面な人が折を見て整理してくれるはずです。しかし上司が「共有フォルダ」を整理してくれといっても誰も動かないのです。
この背景には、共有フォルダが複雑なこともありますが、もともとパソコン使用者は共有フォルダに関心がありません。それは「パソコンは個人で管理するもの」との考えに基づいているからです。「ファイルは作成者が管理する」ことが一般的ですので、共有フォルダは二の次になるのです。
共有フォルダの運用にはパソコン使用者の協力が不可欠ですので、共有フォルダを整理整頓しようとするなら各自のコンセンサスを得る必要があります。
ファイルを削除してもごみ箱に入らない
共有フォルダのファイルを削除すると、ごみ箱に入らず消失してしまうことを皆さんはご存知でしょうか。これは驚くべきことです。というのは個人のパソコンはファイルを削除してもごみ箱に入って復元できるからです。
数百、数千人という人が共有フォルダのファイルを利用したとします。このことは、そのファイルが組織にとって重要であることを表しています。使用者が増えれば、パソコンリテラシーの低い方も増えますが、そのことを除外しても使用頻度に応じて操作ミスの発生する確率は高くなります。
また、個人のパソコンと共有フォルダのファイルでは重要度は比較にならないはずです。組織ではミスの起こる確率も大きくなります。それにもかかわらず、個人のパソコンのファイルは復元が可能で共有フォルダではできないというのは「意味不明」の仕様に思えます。
このことは、「パソコンはあくまでも個人で利用するもの」との主張の結果かもしれません。私たちは個人向けのコンピューターを組織で運用しているのです。
上書きすると元のファイル内容を消失する
ファイルを削除するのと同様に、操作ミスによりファイルを上書きしてしまった際には元のファイル内容を消失します。これは個人パソコンも共有フォルダも同じですが、後者はファイルの重要性も操作ミスの発生する確率も高くなります。
Aさんが手間を掛けて書類を作成したとします。Bさんがそのファイルを開いた後に誤って内容を削除したとします。そのことにBさんが気づかずにファイルを上書きしてしまうと、Aさんが作成した書類は跡形もなく消えてしまうことになります。
複数の人が同一のファイルを使う場合には、このような上書きによるリスクも発生します。
ファイルの同時起動はトラブルのもと
共有フォルダから、ワードやエクセルのファイルを複数の人が立ち上げた際には、後から開こうとすると「読み取り専用で開きますか」と表示しますが、これはファイルの同時起動を防止する機能です。
共有フォルダのファイルを複数の人が同時に開くとトラブルが発生することがあります。パソコン普及期には、この機能が実装されていなかったのでトラブルが絶えませんでした。
例えばAさんがデザインしたファイルをBさんも開いていたとします。Aさんはその日の作業を終了したのでファイルを保存して帰宅しました。続いてがBさんファイルを開いていたことに気づき保存終了したとします。するとAさんのファイルはBさんがファイルを開いた時の状態に戻ってしまうのです。
また、同時起動したファイルを複数の人が同時に保存したりすると、ファイルが壊れたりパソコンがフリーズしたりします。このようなトラブルに対応するために、マイクロソフト社では同時起動防止の機能を加えたのです。
仕様に従わないメーカー
共有フォルダはピア・ツー・ピアというネットワーク形態で動作します。しかしこの形態ではファイルの同時起動を防ぐことができません。そこでマイクロソフト社ではワードやエクセルといったソフト側から共有フォルダ側に、開いたファイル名を通信するようにしたのです。これにより共有フォルダはファイルの同時起動を防止することができるようになりました。
しかしワードやエクセルは同じマイクロソフト社の製品ですので問題ないのですが、他のソフトメーカーはどうなのでしょう。マイクロソフト社ではこの同時起動防止の仕様をソフトメーカーに推奨しています。しかし仕様に準拠するかどうかはソフトメーカーの判断になりますので、準拠しないメーカーのファイルは共有フォルダ上で同時起動してしまいます。
弱小メーカーだけでなく、アドビシステムズといった大手メーカーもこの仕様に準拠していません。そのために有名なイラストレーターやフォトショップのファイルは、共有フォルダから同時起動してしまうのです。
プレビューを表示しないファイル
共有フォルダにはファイルの内容を表示するプレビュー機能があります。わざわざファイルを開かなくても内容が分かる便利な機能ですが、これもマイクロソフト社が推奨する仕様のために、準拠していないファイルではプレビューを表示しません。
イラストレータのファイルは、共有フォルダではプレビューを表示しません。表示させるにはイラストレーターを立ち上げて、ファイル読み込みを選択してエクスプローラーに類似したソフトを起動する必要があります。
ファイルの内容が書類の場合では、ファイル名から内容をある程度予測することができます。しかし図面やデザインをファイル名で表現するのが難しいことからプレビュー機能が重要になります。共有フォルダではそのような図面やデザインのプレビューが使えない場合があります。